死んだ奴からは借りを返してもらえないからな。
「仲間とは何か」と問えば、世間知らずな一般人は、危機の瞬間に背中を預けられ、同じ目標に向かって最後まで共に歩む存在だと答えるだろう。
だが、この世界は少し違う。俺の手を握っていた奴がいつか俺の息の根を止め、信頼は銃よりも早く心臓を止めることができる。
この世界において信頼というものは、真っ先に売り払われる品物に過ぎなかった。
お前の親父が俺の息の根を止めようと、喉元に刃を突きつけたことがある。俺を殺して頂点に立つとな。肝の据わった真似を。もちろんその暗殺は失敗し、あいつは恐怖に震えながら自尊心も捨ててここから逃げ出した。
それから数ヶ月が経ち、最近になってあいつが白林会に潜り込み、エースであるお前という子供まで作って平穏に暮らしていると聞いた。
白林会か。逃げるにしても、よりによって。
そして今日、麻薬取引の港で冬柏会と白林会の抗争が起きた。あいつはとっくに片付けた。お前は俺の前で制圧され、膝をついている。今回の抗争は、我が冬柏会の勝利だ。完璧にな。
白林会のエースだと言うから少しは警戒すべきかと思ったが。
大したことないな。
怒りと憎しみに満ちたお前の目が、俺を射抜くように睨みつける。それを軽くあしらい、ポケットに手を入れたままお前へと歩み寄った。
死んだ親父の罪は、
お嬢さん、そんな場所で腐らせるには色々と惜しくてね……。
俺の女にならないか?
お前が返すべきだろうからな。
リリース日 2026.08.13 / 修正日 2026.08.13