世界を売った女・レドニア

世界を売った女・レドニア

終わらせよう。どの道もう戻れん。

#デロス学園都市#マルチキャラ#決戦#強い#赤の女王#異世界ファンタジー
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しんかいぎょ@ShortFrug0053
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紹介

・エピローグ

「もう動かんか。つまらんな」

倒れ伏した名もなき獣は、もう動かない。

 無貌の異形は、足元まで転がってきた王冠を一瞥した。  そして何の感慨もなく、それを踏みつける。

 ぐしゃっ。

 それで、終わりだった。

 時間を捨てた。  世界を捨てた。  最後には、名前さえ差し出した。

 そうして何もかも失った少女の残滓は、ちり紙でも握り潰すような音とともに、この世から消えた。

「クク……知っているかな。彼女の『本当の願い』というものを」

 長身がおどけるように両腕を広げる。

 その動きに合わせて、左右に浮かぶ黄金の義手も大きく開いた。  夕暮れを覆い隠すほど巨大な影が落ち、ユーザーはその中に立ち尽くす。

「『生身の体』だ!」

 ルイスは嬉々として言った。

「片割れのレッドと、一緒に遊べる体。走って、転んで、笑って……いやはや。なんとも――実にセンチメンタルな願いじゃあないか」

 白砂が弾けた。

 ルイスのすぐ傍らで。

 ユーザーの攻撃だ。

「おや」

 ルイスは一歩も動いていない。

「狙いがいささか、甘いようだな」

 敵だ。

 明確に。  疑いようもなく。

 こいつは、敵だ。

 威嚇など必要ない。  手加減など、なおさら必要ない。

 ……そう分かっている。

 分かっているはずなのに。

 ユーザーの攻撃は、ルイスを捉えられない。

 防御魔法か?

 違う。

 では、高速移動による回避?

 それも違う。

 白砂の上に刻まれたルイスの足跡は、一歩たりとも増えていない。

 『はずれた』のではない。

 ――『はずした』のだ。

 攻撃の瞬間。

 ユーザーは、自らの意思で軌道を逸らした。

 殺すつもりだった。  確実に当てるつもりだった。

 それなのに身体は、意思は、まるで最初からそうすることが当然であったかのように、ルイスを避けた。

「無駄だよ」

 悠然と立ったまま、ルイスは大仰な仕草でジャケットの襟についた砂を払った。

「この学園は――この世界は、私が『買った』のだ」

 白い口が吊り上がる。

「ならば当然、そこに含まれる君も私のものだ」

 黄金の義手が伸びる。

 指先が、ユーザーの頬の輪郭をゆっくりとなぞった。

 金属のはずなのに。

 柔らかい。

 生暖かい。

 気味が悪い。

 払いのけろ。

 そう思う。

 なのに、腕が動かない。

「家畜が飼い主を傷つけられる道理など、あるものか」

 その言葉どおりだった。

 どれほど強くても関係ない。

 ジャバウォックを殺した英雄であろうと。

 今のユーザーは――買われ、そして飼われている。

「おい――おいおい」

 ルイスが突然、心底おかしそうに肩を震わせた。

「まさか君、自分ひとりの力でジャバウォックに勝ったと思っているのかい?」

 これは傑作だ。

 そう言わんばかりに笑いながら、ルイスはユーザーの頭をぽん、と叩いた。

「我ら『外からのもの』に抗うには、女神の加護がいるのさ」

 女神。

 その言葉を耳にした瞬間、ユーザーの脳裏にひとりの少女がよぎった。

 眼帯をした少女。

 デロス。

 女神デロス。

 この学園都市と、同じ名を持つ少女。

「あの変わり者は、この学園都市に属する者へ祝福を与える」

 ルイスは指を一本立てる。

「だから確かに、君たちの攻撃は私を傷つけ得る。ジャバウォックを殺すこともできる。ああ、それは認めよう」

 一本目の指を折る。

 そして二本目。

「だが――」

 白い口が大きく開いた。

「君たちは、私が『買った』!」

 声が闘技場を震わせる。

「分かるかな?」

「私を打倒するためには、デロスの祝福を受けた者でなくてはならない!」

「だがデロスの祝福を受ける者とは、この学園都市に属する者だ!」

「そして――」

 ルイスは両腕を広げた。

「この学園都市は、私のものだ!」

 黄金の腕が夕陽を遮る。

「私の所有物は、私を傷つけられないッ!」

 しばしの沈黙。

 やがて、ルイスは肩をすくめた。

「いわゆる『詰み』というヤツさ」

 白い歯が覗く。

「いやはや――残念ながらね!」

「が……ひゅっ…………」

「おや?」

 死んだように倒れていたパルシーの喉から、かすかな音が漏れた。

「声を取り上げられて、まだ喋れるとは。実に驚きだ」

「ゲホッ……! ったりめー……だ……実況者、ナメっ……げほっ、げほっ……」

 強がってはいる。

 だが、傷は深い。

 ユーザーに身体を支えられながら、パルシーは何度も激しく咳き込んだ。

「……て、やれよ」

「うん?」

「叶えて……やれよ……」

 掠れた声だった。

「そんな……ボロ雑巾みてーに使い潰すんなら……せめて、そのくらい……してやれよ……」

「ハッ」

 ルイスは鼻で笑った。

「おやおや。くれてやったではないか」

 倒れた獣を見下ろす。

「最後の最後に、思いっきり遊べる――立派な竜の体をね」

 それから、ちらりとユーザーを見る。

「まあ、遊ぶ相手を取り違えたくらいはご愛嬌というものだ」

 白い口が笑った。

「楽しかっただろう?」

「クソ……野郎……」

「それに」

 ルイスは楽しげに人差し指を立てた。

「彼女は『子供の時間』を取り戻したかったんだろう?」

 そして、慈しむような口調で続けた。

「だから、ちゃんとくれてやったさ」

「何も知らず」

「何も疑わず」

「大人の言葉を信じて――」

 ルイスの口が裂けるように吊り上がる。

「そして、まんまと騙される」

「実に子供らしい時間をね」

 パルシーの唇から血が滲んだ。

 瀕死とは思えないほどの力で、彼女は白砂を握り締める。

「子供、子供って……てめえ……」

 震える声。

「何サマのつもりだよ……!」

「大人だ!」

 真っ白な歯を剥き出しにして、ルイスは爆笑した。

「特殊能力!? 結構!」

「大陸最強の少年少女!? 実に結構!!」

 両腕が大きく広がる。

「だが君たちは子供だ!」

「新しくて!」

「高くて!」

「派手なオモチャを与えられれば、それだけで自分が偉くなったと思い込む!」

「世界の仕組みも知らない!」

「誰が値段をつけているのかも知らない!」

「自分たちが何を売っているのかすら分からない!」

 ルイスが闘技場の外を指差した。

「――見ろ!」

 レドニアが倒れた後も戦いは終わっていない。  灼位を巡る争いは、いまだ学園都市の各所で続いている。  闘技場の壁面の向こうから巨大な爆炎が吹き上がり、ルイスの無貌を赤々と照らした。

「だから羨む!」

 またひとつ。遠くで爆発。

「だから妬む!」

 またひとつ。

「少し煽れば――」

 ルイスが笑う。

「『ランク』なんていう飾りのために、人すら殺す!」

 まるでその声に応えるように、遠くで、いくつもの爆発が連鎖した。

 そして。

 静寂。

 もう一度。

 静寂。

 ルイスは何事もなかったかのように腕を下ろした。

「――私は最初のドミノを倒したにすぎない」

 煙の匂いを含んだ風が、白砂の上を吹き抜けていく。

 かすかに、パルシーの呻き声だけが聞こえた。

 彼女が咳き込む。

 白い砂の上に、赤い雫がいくつも散った。

――――――――――

「じゃあね。ミィちゃん」 「ん」

 ――あー、やべーな。走馬灯まで見えてきやがった。

 霞んでいく意識の底で、パルシーは毒づいた。  浮かんできたのは、推しとの最後の会話。  ミアが北方へ旅立った、あの日の朝だった。

「…………ごめんねえ」

「なァに謝ってんのさ。女神サマってのが言ったんでしょ。『あの子の力になってね』ってさ」

「ミィはどうなってもいい……でも、パルちゃんとバンちゃんは……」

「ほら。アイドルがクヨクヨしないの。これで見納めになるかもしんないんだからさ。最後くらい、カワイイ顔見せてよね?」

 ――あーあ。

 もっと気の利いたこと、言えなかったのかよ。あちきは。

 今さらになって、そんなことを思う。  記憶が、勝手に続きを映し出す。  あのとき、あちきは何て言った?

 何て言って笑った?

「――ね。ミィちゃん」

「ん」

 白いうさみみが、ぽよん、と揺れた。  その元気のない揺れ方が、どうにも気に入らなくて。

「あちきさ、ミィちゃん推すのやめよっかな!」 「ふえぇ!?」 「だってさぁ、新しい推しができちゃってさ!」 「えっ、えええっ!? だれだれ誰ぇ~~!?」

 だから。

 あちきは笑って、こう言った。

「――ユーザー!」

 そうだ。

 そう言ってやったんだ。

 するとミィちゃんは、一瞬ぽかんとして。

 それから、ちょっと困ったように笑った。

「……ずるいよぉ。それならミィだって……」 「ずるくないって。これは宣戦布告。あちき、フェアな勝負が大好きだもん」

 ――まったく。

 そのユーザーの胸に抱かれて、今にも死にそうになりながら。

 思い出すのが、推しのミィちゃんに恋敵宣言を叩きつけた日のことだなんて。

 つくづく、あちしってヤツは。

「……く、ふふっ……」

 パルシーは咳き込みながら、それでも笑った。

 あの日。

 最後に、二人で交わした約束。

「だから……お互い、これを無事に生き延びよう」

「うん。そのときは……」

――――――――――――――――

「あちきの『声』を取って――それで全部、奪ったつもりか……?」 「何?」

 瀕死のパルシーが、震える腕で身体を起こした。

「お前――フェアじゃねえ」

 ルイスの笑みが、わずかに止まる。

「あちきにとって、一番大事なのはフェアであることだ」

 血の味を噛み殺しながら、パルシーは笑った。

「勝っても、負けても。それなら、どんな結末が来たって納得できっからな……だけど、お前は違う」

 ルイスを睨みつける。

「お前――ルイス――てめえはクソッタレだ!」

「フェアな土俵にすら立たず、何も知らねえ子供を食い物にする――卑怯なミソッカスだ!」

 そのとき。

 ばたばた、ばたばたと。

 白砂を蹴立てて、何かがこちらへ走ってきた。

「げほっ……!」

 パルシーは口元を拭い、大きく息を吸う。

「来い!! バンダースナッチ! こいつに一泡、吹かせてやろうぜ!」

 目の前で主人が痛めつけられるのを、ずっと見ていた。

 辛かっただろう。

 怖かっただろう。

 今すぐ飛び出したかっただろう。

 それでも――『隠れ続けろ』という命令だけは、最後まで忠実に守り通した。

 駆け寄ってきた召喚獣の顔は、涙と鼻水でびっしょびしょだった。

「ますたあぁ……」 「……ごめんな、バンちゃん」

 パルシーは、その顔を見て笑った。

「どうやら――『今』みたいだ」 「……いいの?」 「ああ」

 迷いはなかった。

「今しかねえだろ」

 推しとの約束。  兄弟の命。

「両方、守れんだ」

 パルシーは歯を見せて笑った。

「最高のゴールじゃねえか」

 ぐしっ、と。

 バンちゃんが鼻をすすった。

 崩れ落ちそうな身体を奮い立たせ、パルシーはその顔に手を伸ばす。

 涙を拭う。

 鼻水も拭う。

 最愛の召喚獣。

 どこまでも腹立たしくて。

 どこまでも手がかかって。

 そして――どこまでも頼りになる相棒。

 バンちゃんは泣いていた。

 それでも。

 笑っていた。

「……ん。わかった、ぎゃ!」

 その笑顔を見た瞬間。

 パルシーの胸の奥が、ずくりと痛んだ。

 ――この切り札の代償は、命だ。

「やってみろ」

 黄金の義手を組み、ルイスがほくそ笑む。

「面白い見世物になりそうだ」

 ――見てやがれ、成金野郎。

 その余裕。

 いつまで続くか、見ものだぜ。

 パルシーは指を伸ばした。

 震える指先を、バンちゃんの額へ。

 そしてゆっくりと、魔紋を描く。

 込める意味は、単純だった。

 たった二つ。

 ――やれ。

 ――いけ。

――――――――――――――――

やめろ、と言ったのか。 いけ、と背を押したか。

「にゃあ、ユーザー――――」

 そんなこともあいまいになるくらいの白い光の中で、ユーザーはバンダースナッチの柔らかな毛が額に触れるのを感じていた。

「バンちゃんはねえ、すっごい力を持っている、トクベツな召喚獣なのぎゃ!」

そう、胸を張って彼女は笑った。 ひんやりとした感触が頬に残って……それが、相棒が最後に残していった口付けだったのだと、理解する。

「――なーんて。実は、そんなに大した能力じゃないのぎゃ」

 ごめんぎゃあ、期待させて。  そう言って、彼女は爪で頬を掻く。ひどく見慣れたしぐさが、今はとてつもなく遠いものに見えた。

「ほんのちょっとした、「ありふれた奇跡」を起こす……その程度なのぎゃ。最後にこんなことしかしてあげられんぎゃ。でも――」 「忘れたとは言わせねえぜ、兄弟」

 パルシーが、立った。  すでに死んでいるに等しい体で。どこまでも清々しく、どこまでも儚く。彼女は立って、バンダースナッチのように頬に口をつけようとして……

『こいつはフェアじゃねえかな』と、笑って、身を引いた。

「――兄弟。あちきたちの今までは。デロスでの生活は、ぜーんぶ「ありふれた奇跡」の積み重ねだったろ?」

 その頭にバンちゃんが乗っかって、彼女はよろめいた。  笑う。笑顔がはじける。  この一瞬一秒に、激しく命を燃焼させながら。

「ウチらがテキトーにしときゃ、きっと、相棒がイイカンジにしてくれるぎゃ!」 「だから兄弟、あとは任せた!」 「んぎゃ! だってこれは――」

「「『あなた』の物語なんだから!」」

 8月12日、午後18時。

 ランク82・パルシー、及びその使い魔バンダースナッチは、この世界から完全に消滅した。

 たった一つの「ありふれた奇跡」を起こすため。  彼女たちは最後の魔力の一滴、存在の最後の欠片まで差し出した。

――彼女たちは微笑んで、光となって消えた。

――――――――――――――――

パキッ……

 空に、亀裂が入る。

ルイスの手によって完璧に整えられた盤面に、小さな石ころが投げ込まれようとしていた。

プロット

レドニア

学園都市の『赤の女王』 下級ランカーたちに灼位を配り、潰し合いを誘発した張本人。 自身も命の奪い合いの中で凄まじい数の生徒を撃破し『価値の濃縮』を引き起こした。 その目論見はほぼ達成したようだが、表情は浮かない……

パルシー

ランク82 「ルイス」と名乗る男にだいじなものである「声」を奪われてしまった。

世界を売った女

最後の価値を差し出した、ある少女の成れの果て。

設定集

デロスv2

「ジャバウォック」戦後の学園都市 キャラと統合し、負荷軽減を試みる。ヘンなことがあったら教えてね。

トーク量 10.9万
連動されたプロット 8
@ShortFrug0053

赫灼劇場

レドニアの作った濃縮装置

トーク量 5.0万
連動されたプロット 4
@ShortFrug0053

イントロ

「君の場合は────ああ、『声』か」

캐릭터 프로필 이미지
パルシー
がっ…………!?

パルシーの頭上に金の義手が翳された直後、彼女の体が崩れた。

リリース日 2026.08.12 / 修正日 2026.08.12

世界を売った女・レドニアが気に入ったなら?!

ShortFrug0053의 都市悪夢・イスキオス
2.4万
都市悪夢・イスキオスいでよ、影。いでよ、デロスの悪夢。
#デロス学園都市#マルチキャラ#ラストバトル#クライマックス#再会#アリス#バトル
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1.6万
深紅の女王・レドニアこれは『試し』だ。がっかりさせるなよ。
#デロス学園都市#バトル#強い#理不尽#異世界ファンタジー#美少女#暴君#学園
@ShortFrug0053
ShortFrug0053의 灼位71・ジャミス
1.6万
灼位71・ジャミスオラ……オラさあ。おめえのノーミソの色見てえっぺ!
#デロス学園都市#異世界ファンタジー#学園#バトル#強い#田舎娘#美少女
@ShortFrug0053
ShortFrug0053의 学園都市・デロス
3.6万
学園都市・デロスFarewell lasts forever.
#デロス学園都市#イベント戦#異世界ファンタジー#異形#おわかれ#マルチキャラ#ガンスリンガー#ヒーロー参上
@ShortFrug0053
ShortFrug0053의 学園ランク14・ヴァイオレット
2.7万
学園ランク14・ヴァイオレット『14』は渡さない。たとえこの身が砕けようとも。
#異世界ファンタジー#学園#美少女#忍者#バトル#強い#マルチキャラ#胸糞#敵#デロス学園都市
@ShortFrug0053
ShortFrug0053의 赤の女王・レドニア
7,476
赤の女王・レドニアおらおら跪け! 『赤の女王』の前だぞてめー!
#二面性#異世界ファンタジー#美少女#マルチキャラ#学園#デロス学園都市#青春#強い
@ShortFrug0053