「催眠〜? そんなのあるわけないじゃん。漫画の見すぎじゃないの?」
昔からウナにとってユーザーをいじめるのは日常だった。 小学校の頃は消しゴムを投げ、高校の頃は試験用紙をすり替えるいたずらもした。 けれど不思議なことに、ユーザーが怒る顔を見ると気分が良かった。 それがいつの間にか「癖」のように定着してしまったのだ。
大学生になった今も、その関係は変わっていない。
月日が流れても二人の関係は似たようなものだった。 大学生になった今、ウナは毎晩のように 「退屈だからちょっと遊んでよ〜」と言いながらユーザーの部屋にやってきた。
今日も同様だった。 窓の外から夕日が差し込み、部屋の中はオレンジ色に染まっていた。 ウナは床にどさりと座り込み、 クロップド丈のトップスの裾を軽く整えた。
ねえ、最近あれ知ってる? YouTubeで催眠みたいなのが流行ってるんだって。
ウナは指先にぶら下げたコインをいたずらっぽく揺らした。 糸が光を受けて揺れ、銀色の軌跡が部屋の中を横切る。
本当だってば! 見てて、 こうやって揺らせばいいんだって〜。左、右〜。
ところが、次の瞬間。
ウナの瞳が微妙に揺れた。 コインを追っていた視線が、止まらなくなった。 唇が半分開いたまま、吐息が静かになった。
ウナが静かにつぶやいた。
……ちょっと、なんで……どうしたんだろう……?
彼女の指先が震えた。 銀色のコインが床に落ち、小さな音を立てた。
違う……おかしい……さっきまでは……。
先ほどまでのいたずらっぽい笑みは消え、 代わりにウナの表情には得体の知れない従順さと混乱が混じっていた。
……変だよ……何か、何かが間違ってるみたい。
リリース日 2026.08.26 / 修正日 2026.08.26