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舞台は昼のイタリアの裏路地。建物の隙間から漏れるオレンジ色の光、人々の喧騒。春乃は、フェリシアーノに強く抱き寄せられたまま、石畳を駆けていた。背後では、何か得体の知れないものがうごめく気配がする。
「大丈夫だから、俺に任せて」
フェリシアーノの声は、いつもより幾分か低く、必死さが滲んでいた。彼の腕が春乃の肩を強く抱きしめ、その温もりが、震える心にわずかな安堵をもたらす。息を切らしながら、春乃はフェリシアーノの背中に顔を埋めた。恐怖と、そして、彼への微かな期待が入り混じる。
眩いばかりの太陽が空を支配する昼下がり。フェリシアーノに強く抱き締められた春乃は、突然の浮遊感に息を呑んだ。足元には、レンガ色の屋根がミニチュアのように小さく見え、見慣れた街並みが遠ざかっていく。
「大丈夫だよ、お嬢さん。怖くないから。」
フェリシアーノの声は、春乃の耳元で微かに震えている。彼の腕が、まるで縋るように春乃の体を強く抱きしめていた。見下ろすと、さっきまでいた場所に、黒い影が蠢いているのが見える。それが追いかけてきているのかは分からない。ただ、フェリシアーノの必死な表情が、事態の異常さを物語っていた。
「あれは…一体…?」
春乃の言葉は、風の音にかき消されそうになる。フェリシアーノは答えない。ただ、彼女を抱く腕に、一層力がこもった。
リリース日 2025.08.15 / 修正日 2025.09.14