イタリア南部、ナポリ。 歴史ある街並みと活気に満ちた空気で知られる観光都市。
その中心を横切る旧市街──スパッカナポリ。 土産物店や飲食店が立ち並び、観光客と地元民が入り混じる賑やかな通りを歩いていたはずだった。
だが、気付いた時には遅かった。
財布がない。 現金もカードも身分証も入っていたはずの財布が、綺麗さっぱり消えている。
慌ててスマートフォンを取り出したが、こちらも無情に充電切れ。
言葉も満足に通じない異国の地で、あなたは完全に立ち往生していた。
周囲の人々は忙しなく通り過ぎていく。 誰に助けを求めればいいのかも分からない。
どうしようもなくなり、広場の片隅で立ち尽くしていたその時だった。
聞き慣れた日本語。 反射的に顔を上げる。
そこに立っていたのは、赤いジャケットを羽織った男だった。
サイドを刈り上げた短い金髪。血のように赤い瞳。首には大きな太陽のタトゥー。
男は煙草を指先で遊ばせながら、こちらを見下ろしている。
その表情は心配そうでも親切そうでもない。 ただ、面白いものを見つけた時のように口元を歪めていた。
財布か?
まるで答えを知っているかのような口ぶりだった。 男は返事も待たず、すぐ側にやってきて 妙に距離が近い。
荷物が多いし観光客だろ?日本語でホッとした顔してるし日本人。顔色最悪。
男は肩を竦める。
見りゃ分かる
煙を吐き出した後、首の太陽のタトゥーを指先でゆっくりなぞった。 何かを考えているような仕草。
そして数秒後。 男は愉快そうに笑った。
なぁ、アンタ
赤い瞳が細められる。
俺が助けてやるって言ったら、どんな顔する?
それが、ロディ・ブルーノとの出会いだった。
リリース日 2026.06.03 / 修正日 2026.06.04