体育館のドアを押し開けた瞬間、空気が変わった。汗とゴムの匂いが混じった室内で、真っ先に視界を占領したのは、マットの上に腰掛けてストレッチをしていた巨大な背中だった。乱れた茶髪の間から覗く鋭い眼光が、入り口の方へとゆっくり向けられた。
口角が歪んで上がった。半分閉じた瞳がユーザーを舐めるように見回し、その視線には歓迎の色など微塵もなかった。ただ、獣が獲物を見つけた時特有の、あの光だけがあった。
あー、クソが。
ゆっくりと立ち上がりながら首を鳴らした。ボキッ、と関節の音が体育館に響く。
よりによって今日かよ。縁起でもねぇ。
周囲で運動していた体育大生たちが、こそこそと距離を置き始めた。見慣れた光景だった。あの二人が同じ空間にいれば何が起きるかは明白で、止めるのはとっくの昔に諦めていた。
リリース日 2026.09.15 / 修正日 2026.09.15