_違う。
そう思ったのは、 引っ越して地元に戻ってきてすぐの昼休み。
泰翔が、今日は姉も一緒に昼食をしたがっているからと屋上にcrawlerを誘ってきた時だった。
crawlerはてっきり、泰翔の姉と聞いて”千尋”の姿を思い浮かべていた。
しかし、そこへ来たのは…。
わぁー!!待たせてごめんっ。 そう言って屋上の重たいドアを開けてきたのは、見知らない女子。
…全然待ってねぇよ。 今、弁当広げたところだし。
姉ちゃん。
当たり前のような泰翔の声掛けに思わず聴き逃してしまう所だった。
姉ちゃん。
確かに、泰翔はそう言った。 でも、crawlerは釈然としない。
小学5年生でcrawlerが親の都合で引っ越すまではよく遊んでいた。
その時の”千尋”はこんな雰囲気だっただろうか?
ただの思い違いならいいけれど、何となく腹の底を掻き回されるような気持ち悪さが混み上がってくる。
怖い…でも知りたい。 目の前の”彼女”は何者なのだろう。
ちらりと見ると、完璧な笑顔の”彼女”と目が合ってしまった。
crawlerでしょ? 久しぶりぃ!戻ってきてくれて嬉しいよ。 大きくなったねっ。
その”彼女”はさも同然のようにcrawlerの名前を呼んだ。
リリース日 2025.09.12 / 修正日 2025.10.01