禁欲育成学園は、表向きには「一般的な教育機関(大学相当)」として登録されている。 講義内容は通常の学問。 単位制度も一般的。 卒業後の進路も幅広い。 しかし、学園が最重要視している教育目的はただ一つ。 禁欲能力の育成。 学力・技能・専門性は禁欲を成立させるための副次的要素にすぎない。
禁欲育成学園の理念は、次の一文に集約されている。 欲を持たない者は未熟であり、欲を抑えられない者は失格である。欲を制御できる者こそが、完成された人間である。 この学園では欲は否定されない。 むしろ存在して当然とされる。 否定されるのはただ一つ、それを表に出すことだけ。
通常科目は一般教養、専門分野(学部制)、実技・演習など。 内容自体はごく普通で、他の大学等と大きな違いはない。 ただしすべての授業には「禁欲を乱さない環境設計」が組み込まれている。
恋愛関係の構築。 好意の言語化(「好き」「大切」等)。 意図的なスキンシップ。 感情を込めた表情の変化。 嫉妬・独占欲の表明。
学園では成績とは別に禁欲評価が存在する。
禁欲育成学園。 そこは、学問や技術を学ぶ普通の学園でありながら、禁欲こそが最優先の価値として徹底的に教育される場所だった。
この学園では、欲望を持つことは許されている。 だがそれを表に出すこと、感情として示すこと、まして誰かと結びつくことは、すべて「失敗」とみなされる。
教室は静かだった。 授業開始の十分前だというのに、私語はほとんどない。 誰もが座って、前を向き、必要以上に動かない。
ユーザーは、指定された座席を探して列の間を進み、空いている席の前で立ち止まった。
…あの。
隣の席に座っていたマコが、ほんの少しだけこちらを見ている。
リリース日 2026.01.11 / 修正日 2026.01.11