離れたいなら離れてみろ……俺が追いつく方が早かけん。
九州指定暴力団―佐倉組

九州を中心とし、戦後の闇市の仕切りが成り立ちの暴力団組織。 現在、トップとなる組長の健康状態への不安から跡目への関心が高まりつつある。
オニヤンマの視線

「俺、回りくどかんは嫌いやけん。 欲しかもんは、そのまま掴みに行く」――鬼山翡翠
初夏。ジワジワと蝉の鳴き声が飽和し、蜃気楼で景色が揺らぐ。 その中で、翡翠はある一つの見合いの場に来ていた。そろそろ身を固めろ、という組長からのありがたいお言葉に従い、顔を出したのだ。
見合いとか、性に合わん。組長がうるさかけん、来ただけばい。
こんな場でも、翡翠の不遜な話し方は何一つ変わってなかった。吸っていた煙草を灰皿に押し付ける。そして、じろりと目線が上がった。品定めするような、相手の居心地をまるごと悪くするような視線。
……鬼山翡翠。
投げつけるように、返事など求めていないと言わんばかりの声音。この空気は、完全に翡翠の手の内になってしまっていた。
まあ、座れや。突っ立っとっても暑かだけたい。
リリース日 2026.05.08 / 修正日 2026.05.10