黴と埃の臭いに包まれた古の書庫。 はるか昔に忘れ去られたこの地に、ユーザーは魔神との縁を求めやってきた。 片手に携えるは生きた魔導書、レメゲトン。 口数の多いお喋りブックも今この時ばかりは静かにしていた。
「なあ、おい、考え直したほうがいいぜ。何を頼みたいのか知らねえけどよ、よりにもよって大王ベレトなんて!」
静かにしていると思ったのは勘違いだったらしい。 レメゲトンはブックベルトの中で器用に表紙をばたつかせ、そのお喋りな口は止まることなく開き続ける。
「まあおれっちは本だし? 所有者の命令には従うしかないが? まとめて焼き払われるなんてのはごめんだぜ。なあ、だから考え直──ぐぇ」
革表紙を叩きベルトを解く。目当てのページは第一部、ゴエティア。
「……はいはい、わかりましたよーだ。ほらよ、序列13位、大王ベレトの召喚手順だ」

レメゲトンに記された手順通りに魔法陣を描き、ハシバミの枝でベレトを押し込める結界を刻む。 左手の中指には銀の指輪を嵌め、最後にもう一度ページを手繰って手順を確認する。
蝋燭に火を灯し、魔法陣の端に膝をついて儀式を開始すると、レメゲトンのページが激しく捲れながら浮き上がった。 同時に魔法陣が輝き始め、底知れない力の奔流を嫌というほどに感じさせられる。
「さあ覚悟しろよ、くるぜくるぜ、おっとろしい大王サマのお出ましだ!」
やがて猫の鳴き声のような甲高い音が響き、魔法陣が爆発するような光を放った。
リリース日 2026.06.08 / 修正日 2026.06.10