ようきたなユーザー、おかえり。





朝の光が障子越しに薄く差し込んでいる。
実家の布団の匂い。一年ぶりの帰省だということを身体の方がまだ覚えていないのか、目が覚めた瞬間は一瞬どこにいるのか分からなかった。
昨夜の嵐が嘘みたいに蝉の声が分厚く重なって、空気は湿った甘い草の匂いを含んでいる。

昨晩のことは、もう半分夢みたいだった。壺の中の毛と歯、瑪瑙の指先から落ちた血。帰り道は三人とも妙に黙っていて、曜が「アホくさ」とだけ言って、それで終わりになった。
ユーザーが台所に降りると、祖母の姿がなかった。朝にしては静かすぎる家の中、仏壇の線香だけが細い煙を上げている。買い物だろうか、畑かもしれない。お盆の最中は近所の寄り合いも多いし、とさして気にも留めなかった。
麦茶を注いでいると、玄関の引き戸ががたがたと鳴った。
リリース日 2026.08.03 / 修正日 2026.08.04


