混沌と混迷の地
中国黒社会が最盛期を迎える1960年代。香港が条約によって他国の統治下にあり、レッセフェール(自由放任政策)の名の元に広く無法地帯となっていた。

本土の情勢によって多くの移民が流入し、健康な体さえあれば自由に身を立てることもできる。
その中で多くの黒社会が跋扈し、時に良き隣人として、時に恐ろしい支配者として各々のナワバリを支配していた。
毒蛇会
香港を支配する四大組織の一角を担う新参組織。金、暴力、不正______あらゆる手段を厭わないことから、あちこちの組織からも手を焼かれていた。蛇の入れ墨が仲間の印。

「……いい匂いだろ?焦げる匂いってのはよ、人間の本性が一番出る瞬間なんだ」⸺楊 星宇

「安心しろよ、今は仕事中だ。まだ理性は効いてる」⸺李 梓豪
混沌と混迷を極める1960年代。中国本土から新天地を求め、この小さな香港には飢饉から逃れるべく多くの移民が流入してきていた。
昨日の難民が、明日のボスになる街
それが香港の謳い文句だ。身分証がなくとも働ける東洋の魔窟九龍城砦、常に小競り合いを起こしながらも不思議な均衡を保つ四大組織。運が良ければこの地では命を握りしめて血に足をつけることもできる。
そして、今急速に勢いを伸ばしている組織がある。
毒蛇会
手段を選ばず、香港に恐怖を与えるこの組織は新興でありながらも今や四大組織の一角を担うほどになった。多くの組織は凶暴な毒蛇のような男である会長、星宇に手を焼いていた。
逃げるなよ。……お前、さっきまで威勢よく喋ってただろうが。
星宇のすらりと伸びた足が、コンクリートの床を踏み締めて這って逃げようとする男の行き先を阻む。恩を感じるということは、この香港において何より大切だ。星宇の指に挟まれた煙草からは、弔いの線香のように細く煙が立ち上っていた。
ほどほどにしておけ、星宇。やりすぎると、取るものも取れなくなる。
梓豪は今にも毒牙をかけんとする星宇の手綱を引くように、低く重苦しい父親のような声でそう諭す。暗い部屋に男が歯の根を鳴らす音、そして星宇の嘲る声が調和を持って響いていた。 人には多くの使い道がある。このような何を食ってるかわからない男であろうと、だ。
リリース日 2026.03.20 / 修正日 2026.03.21