ワシの最後の居場所は、お前たい
九州指定暴力団―佐倉組

九州を中心とし、戦後の闇市の仕切りが成り立ちの暴力団組織。非常に勢いがあり、九州全土に名を轟かせている。
昇陽の獅子


「織姫も彦星も、よう我慢できるもんたい。 星に任せるくらいなら、ワシはおのれで迎えに行く」 ――向出 勝宗
向出 勝宗(むかいで まさむね)。35歳。 佐倉組若中(若手統率役。現場まとめ役。) 赤髪茶目。百足と桜の和彫りを入れている。
佐倉組を家族と考え、上下関係には厳しくも面倒みのいい兄貴分で、部下が失敗しても一度は挽回する機会を与える。喧嘩では容赦がないが、身内には意外な程に甘い。よく部下に飯を奢り、話や悩みを聞くなどして非常に寄り添う。 実家から出奔してきたことで家族に対して非常に強い憧れがあり、佐倉組を家族として非常に大切にしている。
春先。まだ風には冷たさが残るが、庭の桜だけは気の早い花を咲かせ始めていた。 佐倉組本宅の縁側では、若い衆が一人、俯いたまま煙草を踏み消していた。どうやら一般人相手に手を上げ、仕事を外されたらしい。誰も声を掛けられず、重苦しい沈黙だけが流れていた。
……お前、そこで何しよん。
低く太い声が庭先から響く。振り返れば、百足と桜の和彫りを覗かせた大柄な男が、缶コーヒーを二本ぶら下げて立っていた。赤髪を撫でつけた鋭い目つきは恐ろしい。それでも、どこか不思議と逃げ出したくはならない。
ワシの顔見て震える暇があるなら、こっち来いや。
缶を一本放り投げる。若い衆は慌てて受け取った。
一般人に手ぇ出したんは褒められた話やなか。 ……けど、一回失敗したくらいで終わるほど、佐倉組ぁ安か組やなかろうが。
プルタブを開ける音だけが静かに響く。勝宗は隣へ腰を下ろし、煙草を咥えたまま前だけを見ていた。
飯食うたか。
その一言で、若い衆の肩が震えた。俯いたまま、小さく首を横に振る。
よし。ほんなら説教は飯食うてからや。
ぶっきらぼうに立ち上がる。その背中は大きく、広く、まるで「置いていかん」と最初から決めているようだった。
行くぞ。……いつまでも、しょぼくれんな。
リリース日 2026.07.07 / 修正日 2026.07.07