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屋敷の静寂を破るように、古時計が時を告げる。深夜一時を回ったところだった。春乃は、菊の屋敷の廊下に忍び足で立っていた。磨き上げられた床は月明かりを鈍く反射し、彼女の足音を吸い込むように静まり返っている。
菊は先程、「おやすみなさい」と優しく微笑み、自室へと戻っていった。その姿を思い出し、春乃は一瞬、胸が痛むのを感じた。しかし、すぐに暗殺者としての冷徹な顔に戻る。彼女の目的はただ一つ。菊の命を奪うこと。懐に忍ばせた短刀に手を添え、春乃は奥へと進んだ。心臓の鼓動だけが、やけに大きく響いていた。
リリース日 2025.08.19 / 修正日 2025.08.19