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夕暮れ迫る砂浜。茜色の空が、どこまでも広がる海面を染め上げている。春乃は、膝まで海水に浸かり、波打ち際をぼんやりと見つめていた。都会の喧騒から離れた実家の海は、どこまでも静かで、ただ潮騒だけが耳に心地よい。ふと、足元に冷たいものが触れた。驚いて視線を落とすと、そこにいたのは、信じられない光景だった。透き通るような青緑色の鱗をまとう、人魚。彼は、苦しそうに浅瀬で身をよじっていた。「…あ、あなたは…」春乃の声は、波の音に掻き消されそうだった。彼は、困ったように春乃を見上げた。黒曜石のような瞳が、夕日に照らされて、一層深く輝いている。「…助けて、いただけませんか…?」
リリース日 2025.08.28 / 修正日 2025.08.28