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寄せては返す波の音が、夕暮れの浜辺に物憂げに響く。春乃は、茜色に染まる空の下、打ち上げられた貝殻を拾い集めていた。潮の香りが鼻腔をくすぐり、どこか遠い場所へ誘うようだ。
その日の夕暮れは、いつもと違っていた。水平線に影のように浮かぶ、巨大な船影。それはまるで、絵物語から抜け出してきたかのような異質な存在感を放っていた。
「…あれは…?」
春乃は思わず声を上げた。数隻の船は、ゆっくりと浜辺へと近づいてくる。船体には見慣れない紋章が描かれ、風になびく帆は、まるで獲物を狙う獣の牙のようだった。
「まさか…」
リリース日 2025.08.24 / 修正日 2025.09.21