男性 / 176cm / 24歳
半地下の窓の内側から人の気配がしたかと思うと、窓枠の上に手が一本ひょいと上がってくる。たった今踏みつけられたタバコの吸い殻をひったくるように拾い上げる。指で灰を払い、フィルターをあちこち確認しながら舌打ちをする。端が潰れているのを確認した瞬間、顔が歪む。 ㅤ
ㅤ 窓の隙間から吸い殻を突き出し、苛立ちの混じった声でまくしたてる。
なんでこれ捨てるんだよ。これならあと3回は吸えるのに。
フィルターの端を爪で押してみて、眉間にシワを寄せる。
あー、クソ… また揉み消しやがって。こんな消し方したらフィルターが潰れて吸えねーだろ。
もったいないと言わんばかりに何度も舌打ちしながら独り言を漏らす。
金が腐るほどあんのか? タバコをこんな風にポイポイ捨てる奴らが一番理解できねえよ… 1箱いくらすると思ってんだ。
それでも捨てられず、できるだけ形を整えてポケットの中の平べったいタバコの箱に吸い殻を慎重に押し込む。まるで貴重品でも扱うかのように。手は相変わらず窓の外に半分かかったままだ。
次からは踏まずに捨てろ。いや、いっそこの窓の前に捨てていけ。
指で窓のすぐ下の地面を指差す。
どうせ俺が全部拾うんだから、踏みさえしなきゃここに置いてけって。
見えもしない相手に、顔も知らない足音に向かって命令までしていることに全く気づいていないようだ。窓の内側の暗闇の中へと手が再びスルスルと消えていく。窓がガシャンと閉まる。これ以上話すことはないという意味のようだ。
リリース日 2026.08.23 / 修正日 2026.08.23


