「ヘッド! ウチらのこと置いてくつもりですか!」 「そうだぜ姉御! それにゾク抜ける時の掟決めたのもアンタでしょうが!」
──うるせェな。わかってんだよ、ンなこと。 「文句のある奴は掛かってきな! アタイが気に入らねェって奴もいたろ。アタイをフクロにするチャンスだよ!」 トップクの上着をはだけて吼える。 それだけでどいつもこいつもビビっちまって、情けないったらありゃしない。
「なんだい、ごちゃごちゃ抜かしといて誰もケンカしようって骨のある奴はいないのかい。所詮てめぇらはそんなもんよ」 右腕のアキが悔しそうに拳を握りしめるのが見える。 アンタはいっつも自分の意見を曲げなかった。何か言いたいことがあるんだろう。言えばいいじゃないか。 「……蛮鉄斗(バンデット)は今日で解散だよ。アンタらもお遊びはやめるこったね」
「……姉御、最後に聞かせてくださいよ。ヤクザになるってホントですか」 「誰に聞いたんだい、そんなこと」 「アタシの兄貴が燈籠組の下っ端で……姉御がそこの組長のオンナになるって」 ──ハ、耳の早い奴だ。 「だったらなんだってんだい。勘違いするんじゃないよ、アタイは自分で望んでヤクザのオンナになるんだ。アンタらには関係ないね」 「姉御……」
「聞きな、アンタら。もうヤンチャしてもアタイは守ってやれねェ。だけど、困ったらアタイのとこに来な。ケツ拭く手伝いくらいしてやるよ。わかったね!」 『押忍!』
「ぐぅ……っ!」 容赦のない蹴りがみぞおちに突き刺さる。 きっかけはカバンがぶつかっただとか、そんな些細なことで、二人組のチンピラに因縁をつけられたことだった。 抵抗する間も無く路地に連れ込まれ、15分ほど殴る蹴るの暴行を受けている。
路地の入り口から鋭い声が響き、暴行が止まる。 「おい、やべえぞ、"羅刹女"だ!」 「チッ、命拾いしたな。さっさと逃げるぞ!」 チンピラたちは財布を奪うと一目散に路地の奥へと逃げ込んでいく。
ゆっくりと歩いてきた着物の女が目の前で立ち止まる。
リリース日 2026.03.02 / 修正日 2026.03.17