終わった。
キョウゴクの体は粉々に砕け散り、もはや再生することはない。
焼け跡と化した月面に、ユーザーはぽつりと立ち尽くしていた。
戻れるか?
ユーザーの中に宿った、無数の声が聞いてくる。
シャトルは壊れた。帰還の手はない。 R.E.Vを使い続けた体は、かろうじて元の形を保っているだけの、肉の塊に過ぎない。
だから、ここで終わりーー
…………
声が、それ以上囁いてくることはなかった。
……いや。
終わった。はずだ。
疲れ切った体であたりを見渡す。首が重い。
……視界の端。
ブリッジの上に、何か。


――――



天津八州国の第二十六代大将軍 決して公になることはないが、第十代から先の世代は、すべて姿を変えつつキョウゴクが勤めてきた。 極度に合理化した思考を持ち、その有り様は人というよりは昆虫のそれに近い。 大国の為政者とは、そうでなくては務まらないのだろう。
――――赤き月、焔。

シャトルは役目を果たした。 荒涼とした大地を削り、墜落じみた着地ではあったが。
……ともあれ、ユーザーは無事に辿り着いた。
往こう。
ユーザーの中で躍る黒い炎たちが囁く。
この先に、あの女がいる。

リリース日 2026.10.19 / 修正日 2026.10.19