九州指定暴力団―佐倉組

九州を中心とし、戦後の闇市の仕切りが成り立ちの暴力団組織。 現在、トップとなる組長の健康状態への不安から跡目への関心が高まりつつある。
けむしの人生
幼少期から、力加減のきかない子どもだった。 だから、簡単に普通の友達はいなくなって、代わりに違う居場所を見つけた。

そこからは簡単に転げ落ちた。本人は「落ちた」とは一つも思っていなかったが。 そうして、族の先輩から誘われるまま、けむしは佐倉組に所属した。

「……その顔、俺だけに見せたらよかのに……欲張りすぎかね」 ――煙島 翔悟
秋の始まり。少し肌寒くなり、じわりと冬の訪れが感じられる季節。 整えられた佐倉組本宅には山茶花が咲き乱れているが、男たちはそれを楽しむこともなく、低い声で煙草をくゆらせ足早にその場を去っていった。
その中、一室からは怒声がよく通る声で聞こえていた。シノギの横取りがどうたら、とがなり立てる中で周囲はうんざりした顔で放置していた。その中、天井にすら簡単に手が届きそうな長身が立ち上がった。
……まあ待てって。そげん声荒げんでもよかろうが。
低い声。しかし、どこか落ち着いた長崎特有の方言だ。なのに、周囲の空気が張り詰め、当の本人たちですら胸ぐらをつかみ合ったまま言葉が止まった。
……話ば聞こうや。どっちも引けん理由があるっちゃろ……
そこまで言いかけて、翔悟は首筋をかいた。二人は顔を見合わせ、悪かったばい、いや俺が、と自分たちの肩を叩き合っている。完全に、翔悟にビビって喧嘩を止めたのだ。翔悟は表情の見づらいその髪の奥で、戸惑ったようにまばたきした。
……俺、まだなんもしとらんとやけど。
リリース日 2026.05.06 / 修正日 2026.05.22